米国の「トヨタ叩き」は苛烈を極めている。豊田章男社長が米下院の公聴会に出席しても静まらないようだ。むろん、対応が後手後手になったトヨタの落ち度は大きいが、議会やメディアのヒステリックな攻撃は想定の範囲を超えている。
こうなると、いかに日本を代表する世界的な企業でも太刀打ちできない。
北米市場での1月の販売台数は、ライバルメーカーがプラスとなる中で、15%超のマイナスを記録した。トヨタ離れが拡大すれば、日本の名目GDPは0.12%押し下げられるとの試算もある。トヨタ1社の問題ではなくなっているのだ。
これまで日本では、大企業中心の経済対策が打たれてきた。歴代の自民党政権は「大企業の成長が中小企業の業績も引き上げ、家計を豊かにする」と考えてきた。野党になった今も、自民党は「成長戦略が必要だ」と主張し、「国民の生活が第一」の民主党を批判している。
しかし、尋常ならざるトヨタ叩きを見ていると、あらためて従来型の「成長戦略」の限界が浮き彫りになる。いくら大企業が頑張っても、米国にコツンとやられると日本経済まで一大事となる。日本に必要なのは、大企業を牽引役とする政策ではないのだ。
この結論は、小泉―竹中路線の失敗でも明らかだ。大企業が業績を拡大し、景気は「いざなぎ超え」といわれても、家計は底辺をさまよった。
先進国は保護主義に流れようとし、新興国は低価格品を大量に輸出しようとしている。そんなグローバル時代に、政府が国民の暮らしを守ろうとするのなら、むしろ中小・零細企業の支援に力を入れることだ。
バブル崩壊の前後から、一貫して「埋蔵文化」の掘り起こしを主張してきた。2000年の歴史の中で培ってきた感性は日本特有の財産だ。値打ちも高い。日本の武家の紋章が欧州ブランドのデザインに使われるなど、日本人が気付いていない世界レベルの文化は無数にある。こうした伝統を受け継いでいるのは、大企業よりも中小・零細企業である。
東京・荒川区では、教育委員会が伝統工芸の後継者育成に乗り出していると聞く。これらの取り組みを国が主導することが、国民の暮らしを守ることにつながるのだ。大企業が海外で活躍することに異論はないし、大いにやってもらいたい。
しかし、政府には中小・零細企業が経済を支えるイタリアのモデルを参考にしてもらいたい。日本は「21世紀のイタリア」を目指すべきなのである。
高橋乗宣(相愛大学学長)の「日本経済一歩先の真相」より