バンクーバー五輪が終わった。橋本聖子団長は「長野五輪を超えたい」と語っていたが、結局、日本が獲得したのは金メダル0、銀メダル3、銅メダル2という結果だった。長野五輪は金5、銀1、銅4という成績である。国力の衰退を実感させるオリンピックだった。
考えてみれば、トリノ五輪も、荒川静香の金がなければメダルゼロだった。
もともとオリンピックは、スポーツの祭典といわれながら、政治的イベントトとして利用されてきた。モスクワ五輪のボイコット問題に限らない。オリンピックは、先進国の仲間入りをハデに演出するための儀式であった。東京五輪がそうだったし、ソウル五輪、北京五輪も同様だった。経済力のある国は、選手の育成に多額のカネをつぎ込み、国力を誇示するのに利用してきた。実際、冷戦時代は米・ロがメダルを独占し、日本やドイツが多少、追い上げていた。
バンクーバー五輪は、予想通りアジアの時代を印象づけた。とくにスケートは、中国、韓国、の強さが目立った。象徴的だったのが、女子のショートトラックのリレーだ。韓国は5連覇を目指したが、反則で失格になり、中国が優勝。中韓両国の選手たちが激しく競り合ったが、日本はどこにもいなかった。
メダル獲得の順位は、カナダ、ドイツ、米国がトップ3。韓国は金6個で5位。中国は金5個で7位と、前回の14位から大きく順位を上げた。日本は20位である。世界3位から19位に急落した1人当たりのGDPの順位と符号するかのようだ。
懸念されるのは、夏季五輪も含めて、メダルが確実に取れそうな次世代のエースが見当たらないことだ。女子マラソンは、高橋尚子、野口みずきの後が続かない。男子陸上も、ハンマー投げの室伏広治の後がいない。成長戦略もないまま、少子高齢化で滅びていく日本を暗示している。
日本は国力が衰退過程に入った事実を直視することから始めるしかない。日本選手がオリンピックで活躍するのは、4年後か、8年後か。それとも戦後直後に逆戻りか。この国は岐路に立たされている。
金子勝(慶大教授)の「天下の逆襲」より