中国が初めて輸出世界一になったそうだ。09年の輸出額は1兆2017億ドルで、03~08年に首位だったドイツの1兆1213億ドルを上回ったとしている。
ナンバーワンの称号は中国のプライド満たすだろうが、世界は歓迎できない。
首位奪取の背後には、中国内外に横たわる巨大な不均衡が存在している。この問題を直視すれば、中国でさえ手放しで喜べないはずだ。リーマン・ショック、ドバイ・ショックを超える大きな揺さぶりが世界を襲う危険性は極めて高いのだ。
中国は昨年、2010年末までに総額4兆元(約53兆円)を投じる超大型の景気刺激策を発表した。巨額の公共投資で内需を刺激し高い経済成長をキープする。そんな「内需主導型の成長」を目指す政策だ。
しかし、政府の狙いとは裏腹に、内需は細ったままである。効果絶大と思われるカンフル剤をもってしても、輸出依存型を変えられないのだ。第1の理由は、先進各国がそろって不況にあえいでいることだ。雇用は不安定で所得が減り、だれもがより安いものを買い求めようとしている。グローバル競争に直面している企業も、生き残りのためにコストがかからない方を選択する。世界中に低価格志向が蔓延し、ニーズをとらえた中国製品が市場を席巻しているのである。その結果、中国はとてつもない金額の経常黒字を計上している。一方で、米国はとてつもない金額の経常赤字を抱え込んだ。両極の黒字と赤字は今も膨らみ続けている。不均衡のマグマはたまり続け、いつはじけるか分からない状況だ。
第2の理由としては、中国国内の富の不均衡が考えられる。中国では全人口の1割が輸出を中心に大金を稼いだ金満家だそうだ。彼らが中国製品を購入すれば、消費は増え、内需拡大につながるだろう。
しかし、金持ちは国産品よりも舶来品を好むものである。内需への寄与は限定的になるし、残りの9割は貧困にあえぎ中国製品も満足に買えない。この貧富の差が是正されなければ、せっかくの内需刺激も効果は乏しい。
暮らしの二極化は政治体制も危うくする。民衆の不満が極限まで達すると、政権は支持を失い不安定になる。それは共産主義でも同じだろう。
中国を取り巻くインバランスは危険水域に入りつつある。それでも輸出を増やし内外の不均衡を拡大し続ける中国。これほど悲観を誘う「世界一」も珍しい。
高橋乗宣(相愛大学学長)の「日本経済一歩先の真相」より