米情報機関はまた大失敗―――。クリスマスの日に起きたデルタ航空機へのテロ未遂事事件である。実は、事件の最初の予兆は4ケ月前に探知されていた。
昨年8月、世界最大の盗聴機関、米国家安全保障局(NSA)がイエメン在住の国際テロ組織アルカイダ指導者の電話を傍受した。ナイジェリア人をテロ攻撃に使う、という内容だった。今度の事件で捕まったナイジェリア人、ウマル・ファルーク・アブドゥルタラブ容疑者(23)がイエメンに到着したのは同月のことだった。それから3ケ月後の11月、著名な銀行家で同容疑者の父がナイジェリア在勤の米中央情報局(CIA)要員らに、「息子が過激なイスラム教に改宗、危機だ。」と訴えた。同容疑者に関するデータはその後、CIA本部に送付された。
しかし、CIA情報もNSA情報も、他の情報機関と共有されることはなかった。彼の名前はテロリスト身元データーベース(TIDE、計55万人)に挿入されただけ。4000人弱の飛行機搭乗拒否者リストには入れられなかった。
さらに事件の3日前の12月22日、ホワイトハウスで行われたクリスマス休暇中のテロ対策に関する会議で、「国土に対する主要な脅威」と題するリポートが配布され、米国がテロ攻撃を受ける可能性が指摘された。オバマ大統領もこの会議に出席したが、全く何の対策も指示せずに、ハワイへ休暇に出かけた。
そして事件当日、デトロイトへの着陸体勢に入ったデルタ航空機内。プラスチック爆弾原料の有機系化学物質PETNに着火しようとした同容疑者に、乗客のオランダ人映画監督が飛びついて消火、事なきを得た。巨額の予算を支出する各情報機関も、空港の金属探知機も、テロ容疑者リストも役立たず。勇敢な乗客がテロを防いだ。
事件後、ハワイで記者会見したオバマ大統領は「担当者およびシステム上の失敗だった」と人ごとのような言い訳。これに対して共和党は強く反発。デミント上院議員は「オバマ政権の融和策は機能しない」と厳しく批判した。
まさに、テロが起きていたら、オバマ政権は求心力を失い、危機を迎えたに違いない。オバマ大統領は意外にも、悪運が強い。
春名幹男(名古屋大学大学院教授)の「国藍情報を読む」より