久しぶりに、シニアの大会を取材して、やはりゴルフは面白いと再認識させられた。日本シニアオープン。ともすれば「ま、いいか」とどんどん妥協してしまう日常。そんな中で妥協せずに生き抜くには、3日目の中嶋常幸のコメントが心に響く。
腰痛、ほかにも肉体的には最悪という満身創痍の状態で挑んだこの大会。時折、腰をかばうストレッチをしながらのプレー。
「腰は、どう?」と聞くと「それは禁句」と答えた。口に出せば切りがないし、気持ちが、どんどん「自分は調子が悪い。腰が痛い。」と悪い運に向かっていくことを知っているからだ。そして、この3日目に7バーディーを奪うなどして、通算5アンダーの4位に浮上した。「途中で、棄権したいと思わなかったの?」と、つい聞いて……しまった。そんなにつらいなら、やめればいいじゃないか、という気持ちを僕だったら、きっと抱くからだ。次があるし、無理することない。60歳前後になれば、そういう気持ちが必ず心の中から出る。
「僕は、自分で限界だという線を引きたくない。フェアウエーを歩いていて、次の一歩の足を踏み出せなければ、ほかの選手にも迷惑をかけるからやめざるを得ないけれど……。
まだ、歩けるし、振れる。」
それに「プライドもある。さらに、僕を支えてくれるスタッフやファンの人たちを思えば、気力が湧わいてくる。いまは、その気力に支えられて戦っているだけ。」と言った。
このコメントは、団塊の世代の自分たちにとって、ゴルフだけでなく実生活でも当てはまる。いつまでも若大将ではないし、年齢を重ねていくごとに、頭の中はどんどんイメージが高みの領域でいられるのに、肉体がついてこない。あるいは、諦めが先に立つ。
そんなときに、中嶋のように頑張れるのは、何かに支えられていなければできない。彼らが頑張れるのは、自分自身のプライドと、支えてくれる人たちのためだという言葉は、あまりレギュラーツアーでは出てこないコメントである。
中嶋常幸が、連続7バーディーを取った時の心境を「クールな状態………。日本語的に言えば、穏やかな状態の集中かな。」と語った。ひたすら目の前の1打と自分を対峙してショットする。それは、きっと仏教で言う「身口意の三業」が整ってプレーできたのだと思う。
けれども、最終日、中盤から雨が降り、温度が下がったところで、肉体がついてこれずに、身口意の三業に歪みが生じ6位に終わった。優勝したのは渡辺司だった。この大会初優勝。「スタートから心臓が口から飛び出しそうでした。何度も怯えている自分がいました。でも、途中で僕だけが苦しんでいるわけではないと強い気持ちをもって戦いました。」という渡辺は、気力、体力、意識の充実感があった。彼は「ずっとレギュラーツアーでは負け続けてきた、青木さん、中嶋さん、室田さん、高橋さん………。50歳を過ぎて勝てたことに感謝します。」と語った。
―――「昌鳳和尚のゴルフ講話」より
(神奈川県・法勝寺 三田村昌鳳師 元週刊アサヒゴルフ編集長)