これでは選挙で負けるはずである。自民党の代表質問を見ていて痛感した。時代感覚が欠如しているのである。
最初に質問に立った谷垣禎一総裁は、「政権に経済成長戦略が欠けている」と強調したが、世界2位の経済大国となった今、戦後の高度経済成長を再現できるわけもない。企業の国際競争力や収益の拡大を後押しする姿勢は、中国やインドなど新興国が掲げるべき政策である。
いくら企業の業績が上向いても、国民の暮らしが楽にならないのは、小泉・竹中政治で結論が出ている。企業が潤っても地方は疲弊し、所得の格差が拡大、ワーキングプアという言葉まで生まれた。それでもなお成長戦略を重視する発想には驚かされる。
日本で政治が目指すべきは国民の安心と安全だ。「コンクリートから人へ」という方針を打ち出したのも、企業でなく国民一人一人の豊かさに焦点を当てたからだろう。日本が進む道として、どちらが正しいかは明らかだ。冷戦時代の亡霊も引きずっている。ベルリンの壁が崩壊して20年。ズレは致命的だ。
谷垣氏が「公助ありきの社会をつくろうとしている」と批判すれば、西村康稔議員も「弱い人のための政治は大きな政治がすべての人の面倒を見るということか」と続いた。10月29日に参院でも、林芳正前経済相が民主党の政策を「社会主義的だ」とこきおろしていたが、まったく呆れてしまう。
「自助」を支援する「公助」が必要なのは論をまたない。あ、介護と仕事の両立が難しいとか、子育てに四苦八苦しているとか、頑張っている人を社会全体で支えるのは当然だ。財政健全化を掲げて社会保障費を一律削減し、「自助努力が大事」と突き放すのは単なる手抜き、他人の痛みも分からずに「公助」を社会主義的と決めつける姿勢は時代遅れの自民党を象徴している。
製造業派遣の禁止や最低賃金の引き上げ方針に、「産業の空洞化を加速しかねない」(西村氏)と噛みついたのも理解に苦しむ。外に出たい企業がいれば、中に入りたい企業もある。国境を自由に行き来するのがグローバル時代だ。この流れは止められない。
英国は、何もないところに外資を受け入れてひどい目にあったが、日本には技術がある。伝統や文化に根ざした産品もある。心配は無用だ。正しい時代感覚なしに自民党の再生はない。
――――高橋乗宣(相愛大学長)「日本経済一歩先の真相」より